本連載は、女性(妻)の働き方や生き方に合わせて、男性(夫)側の働き方や生き方を変えたという子育て家庭の話を紹介するものです。

第5回から紹介しているのは、「朝から夜遅くまで働いていた“生きがい”ともいえる仕事を辞めたとき、妻の仕事をサポートする人生に切り替えた」と話す夫・ケイスケさんと、関西の大学で教員を務める妻・ミカさんという片岡さん夫婦です。

前回は2人が出会ったきっかけや結婚の経緯、さらに家庭の時間を大事にするためにケイスケさんが転職を選んだことなどを時系列で見てきました。そして、ようやく2人の念願だった「子どもを産む」ということが現実的になってきた──そんなとき、一本の電話がかかってきたのでした。
(※本連載に出てくる名前はすべて仮名です)

「8年後の家族の姿」を予測したからこそ出てきた答え

研究者としてステップアップを踏むため、関東にある別の大学へと進もうと考え、あとは形式的ともいえる最終面接を残すのみとなっていたミカさん。労働環境が良く、安定している大手企業に転職してくれたケイスケさんのこともあり、ミカさんは関東に骨を埋める決意をしました。

しかし、そんなときにかかってきた1本の電話。それは、関西時代にお世話になった恩師でした。

「今度公募を出すから受けてみないか」というもの。関西で有数の大学で教鞭を執る恩師からの誘いに、ミカさんは即答で「行けません」と答えます。そして、ケイスケさんにそのことを報告すると、意外な答えが返ってきたのでした。

「“さすがに現実的ではないよね”ってニュアンスで話したら、夫はすごく傾聴力のある人なので、そうだと決めつけずに、将来に関するいろいろなことを話すことになりました。そして、2人で『すんなりと諦めていいものか』と悩み出しました」とミカさん。ケイスケさんもそのときの話は鮮明に覚えています。

「関東の大学の仕事は8年の任期があったんです。それでそのときいろいろ話し合う中で思ったのは、8年勤めた後に、今回のような妻のキャリアにとって良い話があったときに何が起きるかってことでした。僕らはそのときに子どもをつくろうって決めていたので、8年後だと子どもの転校とかも関わってくるかもしれない。そうなったら、もっと難しい選択を迫られるよねって、そういうことを話したと記憶しています」

そうした相談を経たうえで、2人が導き出したのは「チャレンジする」という答えでした。