本連載は、女性(妻)の働き方や生き方に合わせて、男性(夫)側の働き方や生き方を変えたという子育て家庭の話を紹介するものです。
今回ご紹介するのは、妻が小さな美容室のオーナー店長として働き、夫は妻を支えるために15年近く続けた正社員の職を辞し、昼間に主夫業をし、夜間は卸売市場でアルバイトとして働くことを選んだという吉田夫妻の話です。

30歳を目前にして“リアル”に子どもが欲しくなった

吉田さん夫婦の夫・サトルさん(43)は、昼間は主夫業をこなし、夜間に東京都内にある卸売市場でアルバイトをしています。“大”のつく映画好きで、「ずっと映画を見ることができる」という理由から20代のときは映写技師をこころざし、実際に複数の名画座で映写に携わっていました。しかし、映写技師で家族を養うのは難しく、30歳を目前に営業を兼ねた食品配送の職に転じます。正社員として同職に10年以上勤続しました。
しかし、サトルさんは子どもが生まれるタイミングで退職をします。そして主夫として子どもを育て、働く妻を支えるという決断をしたのです。その後、ハローワークで見つけた卸売市場での夜勤が、意外と自分の生活スタイルに合っていると感じ、4年以上アルバイトを続けています。
一方で、サトルさんの妻・メグミさん(35)は、東京都内の一等地にある小さな美容室のオーナー兼店長として働いています。幼少時の頃から「手に職を持って、自分の手で稼ぎたい」という思いがあったメグミさんは、高校を卒業後、美容師になるための専門学校に通いました。そして美容師の卵といえるアシスタント期間を経て24歳でスタイリストに。30歳で出産を経験した後、34歳のときに前オーナーから経営権を譲渡してもらいました。現在に至るまで店長としてお店に立ちながらも、2人のスタッフとともにマンツーマンを売りにする小さなサロンの経営にも力を注いでいます。
そんな吉田さん夫婦に子どもができたのは、結婚から10年以上が経過したときでした。
もともと吉田さん夫婦は、「子どもについては、『絶対欲しい!』っていう感じではなくて、『いたらいたでいいよね』というくらいの気持ち」でした。しかし、メグミさんは30歳を目前にして「リアルに欲しいと思うようになった」と、気持ちが変化したそうです。そこで、念のため産婦人科に行き、タイミング療法を受けることに。
その後、しばらくすると妊娠したことがわかりました。現在、そのときに産んだ女の子は4歳、自宅マンションの向かいにある保育園に通っています。
ちなみに結婚から約10年、子どもがいなかったことについて、夫のサトルさんの両親から「そろそろどうなの?」的な話は一切出てこなかったそうです。この点について、「とてもありがたいですよね。義両親はすごくよく子どもの面倒も見てくれていて、本当に助かっています。今、家族の大切さだとか、自分の周りにいる人たちのサポートの大切さを実感しているところです」と話します。